どこの看護部でも目標による管理を行っていると思います。管理者として目標をつくるのも大変ですが、スタッフに目標管理を理解してもらうことも大変だと思います。
今回は、わたしが看護部長として新人看護師に目標管理を説明した内容をご紹介します。参考にしていただけると嬉しいです。
まず、看護師として働く組織とは何かを説明しました。
学生のときとは違って、社会人として組織に所属します。
組織には、以下の特徴があります。
- 明確な目的があり
- 複数の人々によって構成され
- メンバーが仕事を実行できるように意図的な構造をもつ
組織の意図的な構造とは、組織図に示される権限の明確化や部門化、業務基準やマニュアルによる分業や協働であり、そこで重要なことが組織の目標であり方針となります。
また、医療は多職種によるチーム医療で実践されます。
いろいろな専門性を持った職員がチームとなって、予防や入院・外来医療、地域での在宅医療を実践しています。多様な専門性を発揮するためにも、方針や目標が重要になってきます。
目標管理とは何かを説明しました。
そこで、組織の目標と職員一人ひとりの目標を一致させて、個人を動機づけながら組織の力を最大限に発揮するために目標管理が重要になります。
目標管理は、病院の目標を実現するために、看護部が部門目標を作成します。
その看護部の目標を実現するために、部署ごとに課題を明らかにして目標を作成します。
その部署の目標を実現するために、スタッフ一人ひとりが自分の目標を立てます。 それによって、病院目標が現場の目標にまで落とし込まれて、一貫性がある目標になります。
そして、一人ひとりが目標を実現すべき実践を行うことで、部署、部門、病院の目標が実現されます。
目標の立て方を説明しました。
目標は、実践した結果を評価するので、立てた本人と評価する他者が同じ解釈をする必要があります。
目標を立てるときにRUMBAの法則を視点にすると立てやすいのではないでしょうか。
- 現実的であること(Real)
- 理解可能な言葉で書かれていること(Understandable)
- 目標の到達が測定可能あるいは観察可能であること(Measurable)
- 行動できる目標であること(Behavioral)
- 努力すれば達成可能な目標であること(Achievable)
以上5つの頭文字からRUMBAの法則となります。
新人看護師の目標を具体的に考えてみます。
新人看護師にとって一番の課題は、「安全に看護ができるように基本的技術を習得する」ことだと思います。これは、誰にでも理解しやすい目標です。でも、目標達成を評価するときに、新人は基本的技術ができるようになったと思っていても、プリセプターは安全にはできていないと評価するかもしれません。
目標到達の測定が難しいです。そこで、RUMBAを活用してみました。
- R:安全な看護を提供するために、
- U:新人看護職員ガイドラインの到達目標(厚生労働省参照)を活用して、
- M:75%以上の項目で、
- B:指導を受けたり、自己学習を行いながら、
- A:自立して実践できるレベルに到達する。
この目標ならば、やるべきことや到達したかの評価も明確です。
目標管理は自分自身のキャリア開発であることを説明しました。
最後に、目標管理は自分自身を成長させ、自己の能力開発につながります。
スタッフは、医療チームの中で、自分が果たすべき役割と、現状では難しくとも、もう少し頑張れば達成できる目標を立て、役割意識を持つことで、自立し成長していきます。それは、自分自身のキャリア開発です。
組織の一員となったからには、自分がやりたいことだけをするという個人のニーズのみではありません。組織のニーズがありますので、新たな役割や課題が与えられます。ときには、やりたくないことや自信のないこともあります。しかし、その課題を達成することで専門性が深まり、自分では気づかなかった能力がつくこともあります。
個人のニーズと組織のニーズが重なって目標が達成でき、キャリアが開発されます。特に、看護師は経験学習が重要です。
目標管理で、いろいろな業務や役割を経験し、成功したりうまくいかなったりします。
達成感や満足感が自信となったり、うまくいかなった原因を分析することで、深く考えたり、視野が広がったりと、成長していきます。
まとめ
目標管理は、組織の使命を達成することですが、自分自身の成長につながります。
看護管理者にとって、自部署の課題を達成するだけではなく、スタッフの人材育成を行う重要な機会だと思います。
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