看護管理を学ぶと、看護サービスという言葉が出てきます。
日本では、「サービス」という言葉、ちょっと軽い感じがしませんか。
例えば、飲食店で「サービスです」って言われて、無償でいただけたり、お惣菜屋さんで「サービス」と言われて、おまけしてもらったり。
日常で使っている「サービス」ということばを看護にくっつけると、ちょっと違和感です。
でも、看護は看護サービスなんだと、わたしが、納得した考え方を説明しますね。
サービスの定義
まず、サービスの定義を調べてみました。
サービスとは、人間や組織体に、何らかの効用をもたらす活動であり、市場で取引の対象となる活動である。
近藤隆雄:サービスマネジメント入門、p26、生産性出版、2000
つまり、サービスとは人や組織に役立つ活動そのものです。そして、市場で取引ということはお金を出して買うものです。日常で私たちが使っている無償のおまけということではありませんでした。また、役立つとは人や組織の生活上の必要性を満たすことと考えられます。
それならば、医療や看護も人の生活に必要なサービスのひとつと言えます。
サービスの基本的特性
次に、サービスを具体的に理解するために、サービスには5つの特徴があると言われています。この特徴を理解しておくと、看護の質を考えるときの視点として役立つと思います。
無形性
サービスには形がありません。
これが私の部署の看護ですと、アピールすることができません。経験した後でないと評価が難しいです。また、サービスは商品とは違ってストックしておくことができません。
この無形性に対処するために、サービスの有形性を高めたいです。よく言う、可視化ですね。本来、見えないサービスの質を目に見える形であきらかにすることです。
例えば、褥瘡発生率や転倒転落件数、手洗いの件数などのデータ。また、事例報告は「わたしたちの看護ケアでこのようなことが可能です」というサービス提供例になるかもしれません。
生産と消費の同時性
サービスは生産される場所で消費されます。提供される看護の質を事前に点検することはできません。
看護師の患者へのその時の対応が、患者にとっては看護サービスそのものです。そして、やり直しはできません。
また、サービスは蓄えておくことが出来ません。サービスを必要とする患者がいて、サービスを提供する看護師がいて、看護サービスが成り立ちます。
緊急入院が多い日もあれば、病棟が落ち着いている日もあります。季節や月、週、1日の時間帯によってもサービスの需要量は違ってきます。看護師の人員配置も看護管理者にとって重要な業務になります。
異質性
サービスの品質は常に均質ではありません。
誰が提供するか、いつ提供するかによって看護の質も異なります。看護師の知識や経験、あるいは、看護師のその日の体調によって、サービスの質が変わります。
サービスのレベルや質を全く均一に標準化するのは非常に難しいです。
常に一定の質を保てるように管理するために、マニュアルや手順を準備します。業務をある程度定型化し、教育を徹底します。例えば、6Rの徹底は、定型化することで、ヒューマンエラーを防ぎ、看護サービスの質の変動をなくすことが可能です。また、患者認証を機械化することも同様です。そのためには、ルールを守ることが、基本ですが。
結果と過程の等価的重要性
サービスは結果が良かったというだけではなく、その過程の質も問われることが多いです。
例えば、電車にのって目的地に着くというのは結果ですが、乗っているという過程が、座れてゆったりした時間だったのか、満員で不快だったのかによって大きな違いが生じます。
患者もまた、サービスの提供過程と結果の両方を体験することになります。無事に退院できたときに、入院中の看護も良いサービスだったと思うのか、辛い体験だけで終わってしまうのかによって、結果の満足度も異なってしまいます。
顧客との共同生産
サービスの効果を上げるには、顧客の積極的な参加が重要となります。
患者自身が「治りたい」「元気になりたい」と、思うことが、結果としてのサービスの質を上げることにつながります。サービスを提供する側も、受ける側も、双方の関わり方がサービスの質を左右します。
提供する看護師側も、患者が治りたいと思ってもらうような関わりも重要です。
まとめ
看護は、まさに、看護サービスだと思います。
目に見えないサービスは、多くの場合、評価の対象となりにくいばかりか、問題がない状態ができて当たり前と思われやすいです。
そして、小さなミスは、うまくいっているときは目に見えませんが、トラブルが発生した場合はより目につくようになります。それまでのすべてのサービスを否定してしまうほどの悪影響を及ぼすこともあります。
逆に、結果が残念なときでも、ご家族に過程としての看護サービスに感謝いただけた経験もありませんか。 看護サービスの特性は、かたちがなく、在庫管理ができず、その場かぎりであり、提供する人や提供される人によって異なるもので、一期一会であり、その瞬間を大切にするしかありません。
看護管理者として良い看護サービスを提供するために、誠心誠意に接する組織にしていきたいものですね。
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