この4月に、看護師長になったみなさん、おめでとうございます。
いろいろな感情をお持ちだと思います。
- 新しい役割に、がんばろうと前向きに思っている人
- 自分に務まるか、不安でいっぱいの人
- 管理者なんてやりたくない、もっと、患者さんのベッドサイドにいたいと思っている人
看護師長の仕事は大変でしたが、楽しいこともたくさんありました。今でも、看護師長のときに、一緒に働いていたスタッフが成長している姿を見ると、うれしくなります。
看護師長は自分が考える看護を実現できると、よく言われます。
わたしは、どうだったかなと振り返ると、決して、胸を張って自分のやりたい看護を実現できた、とは言えませんが、看護が楽しいとか、看護ってすごいと感動することは多くありました。
看護師長として、とりあえず、やったほうがいい仕事を、わたしの経験からご紹介します。
職員を理解する
1対1の面接
まず、スタッフ一人ひとりをよく知ることから始めます。
1対1の面接で時間を持てれば、いろいろ話ができます。ただ、人によっては、初めての上司との対面では緊張して、何も話すことがないということもありえるので、わたしは、事前にアンケート用紙を渡して、記入して持参してもらいます。
アンケート用紙といっても、自分の強み、弱み、伝えておきたいこと、程度のテーマの自由記載とします。伝えておきたいことのテーマには、「部署の提案や自分自身のことなど、何でも結構です」と例を載せて説明文を追加しておきます。1行程度の人もいればぎっしり書いてくる人もいました。
アンケートにそって話を聞いていけば、その人を知る手掛かりになります。何が得意なのか、何をしたいと思っているのか、最後に、今後のキャリアプランもたずねます。どのような看護師になりたいのか、何か学びたい領域はあるのか、受講したい研修はあるのか。
そのときに、可能ならプライベートのこともちょっと聞いてみます。例えば、お付き合いしている人が平日休みなので、土日は勤務して平日に休みが欲しいといわれたことがありました。ママたちもいる職場だったので、土日に勤務を希望してくれるのはありがたく、勤務表を作るときに配慮することもできました。
ベッドサイドケアやチームでのコミュニケーションなど看護実践能力
日々の業務で、忙しいときに、スタッフと一緒に看護ケアをすることで、そのスタッフの看護実践能力を知ることができます。丁寧さや患者さんへの声のかけ方など、スタッフステーションだけではわからないことを知る機会も大切です。
また、スタッフステーション内で、同僚や医師への報告や、後輩にどのように指導しているかを見ると、一人ひとりの看護実践能力が理解できます。
患者や家族との関係をつなげる
ラウンド
入院したばかりの患者さんには、自分が病棟の責任者であるとご挨拶に伺います。外科系の病棟なら、医師の回診に同行して、患者さんの状態を把握します。
また、医師が患者さんに説明する内容を聞いて、今後の治療方針を把握します。手術直後や重症の患者さんは、聴診器をあてて、状態を把握することもあります。
特に、ご家族が面会されている場合は、ご家族とも話します。
ベッドサイドをラウンドすることで、スタッフがどのようなケアを行っているのか把握することもできます。動けない患者さんの身の回りが整理されているかとか、重症の患者さんの口腔ケアができているかとか、自分でやってしまいたいと思うかもしれませんが、それではスタッフを育成することはできません。
ギリーズの定義では、「看護管理とは、患者にケア、治療、そして安楽を与えるための看護スタッフメンバーによる仕事の過程である」と、言われています。
(Gillies.D.A.著.矢野正子監修:看護管理―システムアプローチ.へるす出版.1986)
問題の察知、トラブルの回避
患者さんやご家族と関係性ができていれば、スタッフには話しづらいことも聞ける場合があります。看護スタッフへの苦情や医師と患者さんの関係など、小さなうちに知って対応できれば、大きなトラブルになることを回避できます。
自部署の環境を把握
物品管理も看護師長の大切な業務です。いつでも安全な看護が提供できるように、スタッフが効率的に働けるように、物品がそろっているか、ちゃんと作動しているか、壊れていないか。一つひとつ確認はできませんので、スタッフが使用したときに不備を感じたら、ちゃんと報告するように指導しておきます。
スタッフは忙しく、ついつい後回しにしてしまいますが、ほっておくと、次に使うときに困ります。また、これを使ってしまえば在庫がなくなるという場合も、報告したり請求したりしてくれないと、後で困ります。
今は、物品管理でSPD(院内物流管理システム)が入って、サプライ(供給)をサポートしてくれています。そのシステムがちゃんと機能するように、スタッフを指導することは重要です。逆に、無くなることを心配して在庫が多いと、倉庫に物があふれ、整理整頓がされません。経費も増えてしまいます。
時々は、病室以外の倉庫や薬品棚も見て回り、在庫管理が適切か確認します。
他の職種との協力(特に、医師や薬剤師と、事務職員)
診療科の部長医師とよく話をします。現状の困っていることなど、相談すると、一緒に考えてくれます。また、看護スタッフは、看護師長がいない時間帯に、医師に愚痴っていることもあります。時には、スタッフがこんなことを言っていたよと、ちょっと、教えてくれたりします。
医師と看護師は一般的にヒエラルキーがあると思われていますが、診療科の部長医師は同じ管理者として一緒に病棟を作っていく同士であると、わたしは考えています。実際、そのように考えている部長医師たちと、一緒に働いてきました。
看護師長なら、患者や家族と同様に、医師との信頼関係もきづけると思います。私は、素直にこんなことに困っている、このようなことがしたいと、相談していました。
また、医師だけでなく病棟の担当薬剤師や管理栄養士とも、いろいろ気軽に話をしたほうが良いです。自分が気づかない問題などを教えてくれます。
あと、病棟担当の医事課職員とも仲良くなっておくことをお勧めします。診療報酬のことやDPCのことなど、具体的に教えてもらいました。看護師長は、看護ケアだけでなく、診療報酬のことも理解しておくことが大切です。
まとめ
文章にしてみるとやることがたくさん出てきて、余計、負担を感じているかもしれません。しかし、やるべきことが明確になることで、漠然とした不安から解放されるのではないでしょうか。
1年間は、常に新しい業務や役割で大変でしたが、今思うと、すべて大切な経験となりました。
基本は、看護職員のこと、患者や家族のこと、病棟のこと、そこで働く人々のことを見ていくことだと思います。焦らずに、一歩一歩進むしかないと思っています。
おすすめの本
わたしが新任看護師長にお勧めしている本があります。
本の題名になっているように、なり立ての管理者に向けて、書かれています。
著者は、教育学の大学教授ですが、研究方法はインタビューや参加観察などのため、現場に即した内容になっています。
看護師長の現場で、明日から活用できる内容になっています。特に、看護実践者であった自分から、マネジャーになる自分の違いを考えるきっかけになります。また、じゃあ実際何をすればいいのという問いの答えも書いてあります。
実践するかどうかは、自分次第ですが、看護師長になって何をしていいかわからない状態から、抜け出すことができる本になっています。ぜひ、手に取ってみることをお勧めします。
楽しいこと、うれしいことも、いっぱい、あります。
看護部長としては、看護師長さんをすごく頼りにしています。
いい看護をするために、一緒に、頑張りましょう。
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