こんにちは、ふみです。
わたしは、看護師長として12年間、副看護部長として6年間、
看護部長として3年間、働いてきました。
毎日の看護管理で起きている問題を解決するためのツール紹介の続きです。
【SWOT分析】で、自部署の現状を分析し、重要課題をつかみました。
課題を明確にするために、【ロジックツリー】で、問題の原因を分析し、対策をあげました。
今回は、課題を達成するために、目標を決めて、方向性や戦略プランを、より具体的にする【バランススコアカード】を説明します。
看護師長さんは、スタッフが同じ方向を向いて、日々実践できるように、スタッフを導くことが必要になります。
スタッフに説明し、納得してもらうために、
論理的に伝えることが重要になります。
- なぜ、そのように思ったのか
- その根拠や背景
- 何を目指し実現したいのか
- 意図や意味
を、看護師長さんの言葉で語る必要があります。
バランススコアカード(BSC)が優れているのは、戦略を可視化できるという点です。
バランススコアカード(BSC)とは
バランススコアカード(BSC)は、戦略を実施するためのツールで、企業においては、ビジョン及び戦略を具体的な行動に落とし込むフレームワークとして使用されています。
直訳すると「バランスの取れた評価システム」ということだそうです。
「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」の4つの視点でバランスの取れた分析及び評価を行います。
バランススコアカードの特徴
①ビジョンと戦略の明確化 スタッフが同じ方向を目指し、必要性を理解できる
②戦略を具体的行動に落としこむ スタッフ一人ひとりが、自分の使命や役割を理解し、行動に移すことができる
③継続的に改善 戦略を実施したら、PDCAサイクルを回し、必要に応じて軌道修正もできる
④経営資源として、ヒト・モノ・カネなどの資源配分が的確にできる
バランススコアカードの構成要素:4つの視点
戦略目標を4つの視点でとらえ、戦略をたてます。
財務の視点
財務的に成功するための戦略を考えます。
一般的な企業では、「利益を上げる」「売上げを成長」「収益の増大」など
具体的には、収入を増やし、受け入れ患者数を増やし、経費を削減する。
医業収益、医業利益、病床利用率、診療単価、平均在院日数、救急件数、紹介件数、材料費、経費など
顧客の視点
顧客にサービスや製品を継続的に利用してもらうために、どのような行動をとるのか考えます。
この場合、内部顧客と外部顧客の視点があります。
外部顧客は、自施設を利用する患者または利用者とその家族、地域住民、連携する施設、出入り業者や実習に来る学生もいます。
内部顧客は、職員、スタッフです。
病院利用者の顧客満足度、利便性、リピート状況、評判など
業務プロセスの視点
財務目標の達成や顧客満足度向上のために、どのように業務を行うことで効率性や生産性が向上するかを考えます。
医療の質改善、リスクマネジメントの強化、感染管理の徹底、委員会活動、協働やタスクシフトなど
学習と成長の視点
組織や人材をどのように成長させるかを考えます。
業務プロセスの視点での目標を達成するために、
何を学習するのか、どのような能力を高めるのか
と、対にして考えると的を絞ることができます
バランススコアカードの4つの視点で考えることは、
企業では優れたビジネスモデルとして儲かる仕組みをつくることになります。
病院経営では、「医療の質を向上させる仕組み」と置き換えられます。
バランススコアカードの流れ
ビジョン、ミッション、理念の確認
SWOT分析での現状把握し、クロスSWOT分析で、明確になった重要課題が
将来にむけてのビジョンや、病院や看護部としてあるべき姿からずれていないかを確認します。
戦略を検討し、目標を設定し、戦略マップで確認
4つの視点を使って、最重要課題を絞り込みます。
目標への道順である戦略マップを作成することで、目標間の関連が見えて、因果関係がすっきりします。
図 戦略マップのイメージ図
何の関連性もない複数の目標と思っていた内容が、実は関連しあっています。
それを、具体的に目で見て、理解することができます。
そして、ビジョンやミッションの実現に向かっていることがわかります。
戦略マップで示されたストーリーを看護師長は理解し、
スタッフに語れば、
看護師長が立てた目標の意義や意図、重要性を理解してもらえます。
重要成功要因(CSF)の設定
目標を達成するために必要な要因を明確にします。
SWOT分析で明確になった情報を活用します。
例 学習と成長
・スタッフが自己の能力と課題を明確にできる。
・スタッフ一人ひとりが主体的に学習の機会を持つ
重要成功要因は、組織のあるべき姿と一致します。
業績指標(KPI)の設定
KPI(key Performance Indicators)とは業績評価のための指標です。
設定した目標や重要成功要因の進捗状況や達成したかを評価するための指標となります。
例 学習と成長
・スタッフ一人ひとりと目標面接の実施とキャリアプランの作成
・研修の参加率
KPIは指標なので、客観的に目に見える形が良いです。
目標が数値化されていると、定量的に明らかです。
財務の視点であれば、ベッド利用率や、新入院患者数など量的データを設定できます。
しかし、業務プロセスは、定量化することが難しい項目です。
その場合は、「このような状態」の定性データを活用します。
例 業務プロセス
・今までの教育計画の問題を洗い出す
・教育ラダーの理解と当院の看護師のあるべき姿の明確化
・教育ラダーの作成
数値目標の設定
設定したKPIをもとに、実際の数値目標を設定します。
目標を実現するために具体的な数値にします。
定性データに基づく目標の場合、数値化するのは難しいと思いますが、
例えば、「いつまで」とか「どこまで」とか、
数値に置き換えてイメージできるように、目標を設定します。
例
あいまいではなく、具体的で、現実的な目標を設定します。
アクションプランの作成
将来のあるべき姿であるビジョンと、
その実現にむけての戦略マップを設定し、
ターゲットである数値目標を設定したら、
その実現にむけたアクションプランを作成します。
KPIを実現するための具体的な計画です。
机上の空論ではなく、実現可能なものを考えます。
また、どんなに頑張っても自分たちだけでは、できないことは入れません。
PDCAサイクルを回す
バランススコアカードの実践では、目標の進捗状況を持続的に確認していくことが重要です。
Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(改善)のPDCAサイクルを回します。
Plan(計画)で、スコアカードを作成しました。
Do(実行)で、アクションプランを実践します。
Check(測定・評価)で、KPI達成状況をモニタリングします。
Action(改善)で、バランススコアカードの修正やアクションプランの追加などをします。
バランススコアカードの運用のポイントは、「継続」と「向上」だそうです。
ぜひ、日々の看護管理に活用することに挑戦してみてください。
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