わたしが新人だったころは、ダメ出しをされながら厳しく躾けられた感じでした。
でも、最近は、家庭でも学校でも
「ほめて育てよう、やる気をださせよう」という考え方が広がっています。
職場のなかでも、ほめること、認めることが、大切と言われています。
叱ってばかりいた経営者が、社員の良いところを見つけてほめるようになったら、
社員の売り上げが伸び、離職率も低下したという話も聞きます。
本当に、承認することが、スタッフのモチベーションを上げて、帰属意識を高めることにつながるのでしょうか。
看護管理者としてスタッフをどう承認すればいいのか、
プリセプターとして、後輩にどんな言葉をかければいいのか、
文献を参考にして、具体的に説明します。
承認の5つの効果
参考にしたのは、以下の本です。
スタッフのモチベーションを上げる
承認が、評価や報酬・処遇に結びつくと、満足感や、達成感になり、
もっと頑張ろうとモチベーションが高まる。
組織のパフォーマンスを上げる
承認によって、個人のモチベーションが高まり、仕事の成果を生む。
良い仕事が称賛されることで、本人だけでなく周囲の人にとっても、
何をすればいいのかがわかり、生産的な方向に進む。
職場の雰囲気や人間関係が良くなり、生産性を高める。
離職を防ぐ
離職の原因は、意外にも給与よりも、
多忙なために上司や先輩・同僚に認めてくれないという理由が多い。
承認の不足は、不満や不安をもたらし離職につながる。
スタッフのメンタルヘルスの向上
他者から承認されると、自己効力感(自分の能力に対する自信)が高まる。
自己効力感の高い人は、比較的低い人よりも、ストレスが低く、
うつ状態や不安が少ない傾向と言われている。
不祥事発生が抑制される
仕事や職場にプライドを持っている人は、職場で違反をしにくいという研究結果がある。
他者からの承認によって、自分を価値ある人間だと思えれば、
変な行動はとらなくなるのではないか。
モチベーションを高める承認の方法
承認が逆効果になることもある
ほめられることが仕事の目的となり、
いつもほめてくれる上司がほめてくれないと、
それは制裁と受け止めてしまうこともあります。
スタッフがたまたま気を利かせて特別な仕事をしたとします。
それに対して、あなたは「とてもうれしかった」と感謝します。
スタッフは喜んでもらったと満足する反面、
次も同じようなことをしなければならないとプレッシャーを感じてしまいます。
スタッフの自己効力感や有能感を高める承認
スタッフの能力・業績・貢献などを、本人に正しく伝達します。
具体的な事実や客観的な情報に基づいて、ほめたり、認めたり。
看護師を承認するには、2パターン
患者からのお褒めの言葉や、感謝の声をスタッフにフィードバックすれば、
日常的な働き甲斐や、仕事の喜びにつながります。
でも、これだけでは、モチベーションアップにはつながりません。
看護師は専門職であるので、専門家の仲間たちに認めてほしいという思いがあります。
上司や一緒に働く医師や多職種から自分の看護実践能力を認められることで、
看護師としての充実感やキャリアアップにつながります。
看護師長がスタッフを承認するためのお勧めアクション
参考文献をもとに、具体的なアクションをまとめました。
橋口智子、志田京子、撫養真紀子(2018):承認行為につながる看護師長の目配り・気配りの行動特性の明確化.大阪府立大学看護学雑誌.24(1).11-20
スタッフを理解する
性格や表情・言動を把握して、支援を必要とするスタッフを見極める。
実際の看護実践を見て、一人ひとりの、看護能力を把握する。
スタッフの健康管理を気にかける
交代勤務による身体的負担を少しでも軽減できるように、
勤務配慮の必要性を確認したり、自己管理の必要性を伝えたりする。
休息がとれるように働きかける。
モチベーションを高める支援
スタッフに対する期待を伝える。
うまくいったことをほめる。
キャリアアップの支援を行う。
スタッフの主体的な取り組みを支援する。
スタッフ間の人間関係を調整する
スタッフ間の人間関係を見極める。
対応の難しいスタッフを指導するスタッフに対しては、スタッフの思いを受け止める。
そのうえで、異なる視点や方法を提案し、理解してもらう。
タイミングや場を見計らってスタッフに声をかける。
日常業務で介入した方がいいポイントで支援
対応の難しい患者とスタッフのやり取りを見守り、必要時は介入する。
事故や苦情につながらないように指導する。
課題を与えられたスタッフに支援
スタッフを理解し、能力を評価したうえで、目標管理を実践するスタッフへ支援する。
役割を任せる際に、スタッフへ方向づけを行い、見守り相談を受ける。
スタッフの良い変化に気づき、フィードバックする。
目標に対する進捗状況を確認する。
目標を見失わないように、声をかけ、一緒に考える。
新人看護師の職務継続への支援
新人看護師の成長度を把握する。
新人看護師の状況に合わせた教育体制や方向性を、チームメンバーと検討する。
新人看護師が孤独を感じないよう調整する。
スタッフに新人看護師ができたことを披露する。
職場にうまく馴染めない新人看護師の気持ちを聞く。
職場適応が困難に感じている新人看護師に、困難への対処法を提案する。
後進の管理者を育成する
目標達成に向けて、副看護師長や主任を巻き込む。
リーダーとして役割を任せ、できていることをフィードバックする。
職場の雰囲気づくり
話しやすさを醸し出し、場をつくる。
ユーモアを取り入れる。
お互いを認め合う雰囲気をつくる。
スタッフに公平に声を掛ける。
ワークライフバランスを認め合う職場風土つくり
多様な働き方をするスタッフが増える中で、お互いの状況を認め、助け合える職場風土を目指す。
育児中のスタッフの働き方を一緒に考える。
育児中以外のスタッフが不公平を感じないように工夫点を全員に伝える。
例えば、年休取得日数を公平に調整するなど。
看護師長として看護観と管理者としての覚悟を示す
看護師長のビジョンを示す。課題に対する看護師長の責任範囲を示す。
新人と中堅では承認も違う
新人看護師には職場定着を目指す承認
新人看護師も自分たちの仲間であることを伝える。
新人看護師の存在に気づいていることを意味する存在承認につながる。
新人看護師は、看護師長が直接、気にかけていることを知ることで、
もう少し、仕事を頑張って続けようと職場定着につながる。
中堅スタッフや次の管理者候補には、成果を伝えて認めることを意味する承認
役割と同時に権限を与え、責任を負ってこそ、身につく能力がある。
看護師長として、中堅看護師に経験を積ませるチャンスを見つけ、実践させ、
できていることを認める。
その結果、スタッフ自身の成長につながる。
まとめ
看護師長が実践する【承認】について具体的に説明しました。
看護師に必要な承認は以下の2つのパターンで、それぞれ2通りが考えられます。
以下の4つの視点をもって、承認行動を心がけると、
スタッフのモチベーション向上につながるのではないでしょうか。
看護師長として、成長の段階で使い分ける承認は
新人看護師など、能力的にも精神的にも未熟な段階では【ほめる】ことで、
とりあえず仮の自信をつけて、仕事を継続させる。
できている、がんばっている、と認めて、
一緒に働く仲間であることを伝えます。
中堅になったころには、役割ができたことや業績を達成したことなど
客観的事実を【認める】ことで、本物の自信を育て、スタッフの成長につながる。
目標管理を活用して、リーダー役割や委員会の担当など、できた結果を認めて、
たとえ結果が出なかったとしても、前よりも成長していることを伝えます。
専門職である看護師に必要な承認は
〇日常的な働きがいや仕事の喜びを得るために、患者からのお褒めの言葉や感謝の声を
スタッフにフィードバックする。
〇専門職として充実感やキャリアアップの意欲のために、
一緒に働く仲間として、上司として成果や能力を認める。
ラダーへの挑戦や認定看護師、特定行為、糖尿病療養指導士などの資格取得などを支援します。委員会活動やマニュアル作成、勉強会の担当など、
見守り、頑張っていることを、言葉にして認めます。
効果的な【承認】って、難しいと思いますが。
スタッフのいいところを探して、認めて、ほめて。
そして、自分自身も認めてくださいね。
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