看護師長になると、経営のことも重要な課題になりますね。
自部署の利用率や在院日数などのデータや
ベッドコントロールとか。
わたしは、看護師長として12年、副看護部長として6年、働いてきました。
今は、看護部長3年目です。
医療機関の収入は、患者さんを診療したときに受け取る診療報酬でなりたちます。
今回は、診療報酬について、
看護管理の視点で、なるべくわかりやすく説明します。
診療報酬の基本がわかる
看護管理者として理解しておきたい診療報酬の内容がわかる
2022年度の診療報酬で看護に関連するポイントがわかる
診療報酬って、なに(診療報酬の基本)
病院などの医療機関が、患者に行った保健医療サービスに対する対価として支払われるものです。
国が決める、保険医療の範囲と内容を定めた品目表です。
診療報酬は、診療行為一つひとつに対して点数を定めています。
診療報酬は、基本的に2年に一度改定されます。
診療報酬で決められていない行為は、保険診療外となり、医療保険が適用されません。
いわゆる全額自費の自由診療となります。
1点は10円であり、診療行為の価格表となり、これは全国共通です。
診療報酬の改定の流れは以下になります。
- 【内閣】の方針と予算編成を前提として
- 【社会保障審議会 医療保険部会・医療部会】で策定された「診療報酬改定の基本方針」に基づき
- 【中央社会保険医療協議会】で具体的な診療報酬点数を設定
診療報酬は、価格設定だけではない役割があります。
医療機関の収入源なので、医療機関の経営に影響
医療の質の担保
医療サービスの提供促進(政策誘導)
診療報酬には、一定の要件を満たすことが必要とされています。
例えば、地域包括ケア病棟入院料の要件は以下のように決められています。
この要件では、看護職員の配置数や重症患者割合に関する要件もあれば、「適切な意思決定支援に係る指針を定めていること」という指針の作成の要件もあります。
診療報酬という金銭的なインセンティブをつけることで、医療機関全体を動かします。
診療報酬の支払い方法は、大きく出来高払いと包括払いの2種類に分かれます。
出来高払い方式は、医療サービスの提供量に応じてその費用が支払われます。
包括払い方式は、特定の医療サービスをひとまとめにして、1日当たり、1か月当たりなどを単位にして評価する方法です。
急性期医療では、2003年、日本独自の診断群分類DPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System)に基づく医療費の包括評価による支払い方式が導入されています。
主な看護サービスの診療報酬
看護師長さんは、診療報酬の点数本を見たことがあると思います。
あの分厚くて、目次がよくわからない本です。
後ろの和文牽引で、調べたい項目を見つけるのが早いです。
調べる項目の説明文に、「別表」「施設基準」とページ数が記載されています。
そのページの方が具体的に記述されていますので、一読をお勧めします。
診療報酬点数表は、大きく【基本診療料】と【特掲診療料】に分かれています。
基本診療料は、初診料、再診料、入院料など、1日単位で算定するものが多く、診療の基礎となる点数を定めたものです。
特掲診療料は、検査料、処置料、手術料など、行った行為に対する評価で、行為1回単位で算定するものが大半で、診療行為ごとの点数を定めたものです。
例えて説明すると、あなたは、ホテルに宿泊しました。
ホテルの宿泊代金は基本診療料にあたります。
ホテルの滞在中に、あなたはルームサービスで食事をし、エステの施術を受けました。
この追加サービスが特掲診療料にあたります。
具体的に、看護に関連した診療報酬をあげてみました。
主な看護サービス | 診療報酬での評価 |
基本診療料における基本的な 看護サービス | 急性期一般入院料1(看護師比率7割以上) 1650点 |
基本診療料における看護配置 | 看護比率が40%以上と規定されている 入院基本料で70%の配置 25点 |
入院基本料における夜勤体制 | 看護職員夜間12対1配置加算1 110点(14日間限度) |
専門の研修や適切な所定の研修を 修了した看護師等の配置 | 褥瘡ハイリスク患者ケア加算 500点 感染対策向上加算1 710点 (各1回) |
訪問看護の実施 | 在宅患者訪問看護・指導料580点 |
基本診療における基本的な看護サービスは入院基本料となります。
A100代の番号が振られています。
以下は、7対1とか10対1とか言われている、急性期一般入院基本料の一覧です。
看護の分野で頑張って加算が取れる項目を紹介します。
がん患者指導管理料
医師が看護師と共同して診療方針等について話し合い、その内容を文書等により提供した場合 500点(患者一人につき1回)医師、看護師又は公認心理師が心理的不安を軽減するための面接を行った場合200点(患者一人につき6回まで)
排尿自立支援加算
包括的な排尿ケアを行った場合に、患者一人につき、週1回に限り12週を限度として 200点
排尿に関するケアに係る専門的知識を有した多職種からなるチームを設置し、患者の排尿自立の可能性及び下部尿路機能を評価し、排尿誘導等の保存療法、リハビリテーション、薬物療法等を組み合わせるなど、下部尿路機能の回復のための包括的なケアを実施
糖尿病合併症管理料
糖尿病足病変ハイリスク要因を有し、医師が糖尿病足病変に関する指導の必要性があると認めた入院中の患者以外の患者に対して、医師又は医師の指示に基づき看護師が指導を行った場合、月1回170点
栄養サポートチーム加算
栄養管理が必要な患者に対して、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士等が共同して必要な診療を行った場合 週1回200点
認知症ケア加算1
入院している患者に対して必要なケアを行った場合、14日以内の期間 160点 15日以上の期間 30点
認知症による行動・心理症状や意思疎通の困難さが見られ、身体疾患の治療への影響が見込まれる患者に対し、病棟の看護師等や専門知識を有した多職種が適切に対応することで、認知症症状の悪化を予防し、身体疾患の治療を円滑に受けられることを目的とした加算
入退院支援加算1
一般病棟入院基本料の場合 700点 退院困難な要因を有する入院患者で、在宅での療養希望に対して、入退院支援を行った場合に、退院時1回に限り
2022年度の診療報酬での看護関連トピックス
看護処遇改善
地域でコロナ医療など一定の役割を担う 医療機関(注1)に勤務する看護職員を対象に、10月以降収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げるための処遇改善の 仕組み(注2)
(注1)救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関及び三次救急を担う医療機関
(注2)看護補助者、理学療法士・作業療法士等のコメディカルの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める。
注意書きにあるように、すべての病院が対象ではありません。
また、対象を看護職員だけでなく病院によっては他の職種にも拡大する場合があります。
このとき、診療報酬は看護職員数によるので、同じパイを配る人数が増えることになり、看護職員の一人に支給される金額が減る可能性があります。
感染防止対策
新型コロナウイルス感染等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築を重点課題としています。
外来感染対策向上加算の新設(6点 患者一人につき月1回)
診療所も感染防止対策を実施し、地域の医療機関と連携して感染症対策に参画してもらうことを目的に新設されました。
感染対策向上加算が見直し、加算1の390点が710点にアップ
アップされた分、役割も増えています。
感染症患者の受け入れは当然のこと、地域の組織的な感染防止対策の基幹的な役割を果たすことになります。
保健所や地域の医師会と連携し、他の医療機関と定期的にカンファレンスや訓練を行います。
今回のCOVIDのパンデミックを経験して、新型コロナウイルス感染の対応は当然、今後の新興感染症に対しても、地域で一丸となって、逃げずに対応しようという意図だと思います。
地域包括ケア病棟の要件が厳格化
地域包括ケア病棟1・2の在宅復帰率を70%以上から72.5%以上に
地域包括ケア病棟2・4における「自院の一般病棟から転棟した患者割合」6割未満
要は、院内での転棟で患者を回すだけではなく、院外からの入院を受け入れるということです。
一般病床の重症度、医療・看護必要度の心電図モニター削除
A項目:点滴ライン同時3本以上の管理と心電図モニター管理が削除されました。
退院日まで心電図モニターを装着してたり、点滴同時3本以上に該当していても薬剤は2種類以下というデータが確認されました。
影響を受けるのは、心不全や誤嚥性肺炎などで、内科系の病棟で看護必要度が低くなると考えられます。
200床以上の急性期一般医療1では看護必要度Ⅱが義務化となり、処置点数の取り漏れ注意です。
ちなみに、重症度、医療・看護必要度Ⅱは、B項目を除いたA項目、C項目のすべてを、レセプト電算処理コードを用いて評価する方式です。看護師の記録負担が軽減できます。
今後は、働き方改革や看護特定行為のキーワードに注目です。
診療点数早見表は、以下です。
一度、お手にするのをお勧めしますが、お高いので、医事課に見せてもらいましょう。
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