こんにちは、ふみです。
以前、看護師長になったら、とりあえず、やったほうがいい仕事を紹介しました。
今回は、看護師長の仕事を具体的に見ていこうと思います。
まず、看護師長が実践する看護サービスのマネジメントの目的は、組織の理想とする看護サービスの提供であり、それを効果的・効率的に行うことです。
マネジメントの対象は、人的資源・物的資源・財的資源と言われます。
それでは、わたしたち看護管理者は、何を管理・マネジメントしなければならないのか、具体的に見ていきます。
看護師長として、常日頃、行っていることだと思いますが、
ぜひ、振り返って、整理してみてください。
全体が見えれば、いつも仕事に追われている感じから、少し解放されるかもしれませんよ。
組織目的達成
目標をつくり、スタッフに浸透させる
まず、自分の部署の目標をつくります。具体的には、こんな看護をしたいと、目指すあるべき姿を明確にします。そのためには、病院の理念や看護部の理念を読み解き、自分の病院の役割、看護部が目指す看護を理解します。
そして、その目標をスタッフに浸透させます。
中原先生は、それをマネジャーの挑戦課題である【目標咀嚼】と言っています。
中原 淳.増補版「駆け出しマネジャーの成長論 – 7つの挑戦課題を「科学」する」 中公新書ラクレ 2021年
目標をスタッフにかみ砕いて説明し、スタッフに納得してもらうことです。看護師長が考える、どんな看護を実践するのか、その目的は何か、ひとつずつ、丁寧に説明していきます。黙っていても、理解してくれるだろう、では、伝わりませんよ。
看護の組織化:ひとつにまとめて、うまくまわっていくようにする
次に、目標を実現するために、業務に落とし込みます。例えば、業務改善やカンファレンスの充実、退院支援の取り組みなど、スタッフに仕事を割り振っていきます。ワーキングチームを編成したり、副看護師長に権限を委譲したり。
看護サービス提供の仕組つくり
自部署の看護の特性を明確に
病院には、いろいろな看護単位があります。病棟でも、外科系や内科系、ICUやHCU、小児科や産婦人科などなど。病棟以外にも、外来や手術室、地域連携室もあるかもしれません。自分が管理する部署は、病院の中で、どのような役割であるのか、提供する医療や看護の特性は何かを、考えると、必然的に、大切にする優先順位が決まってくるのではないでしょうか。
わたしは、外科系の経験が長かったですが、緊急手術や手術後の合併症など、迅速な判断や対応を必要とされていました。次から次に、手術を予定されている患者の入院のためのベッドコントロールが大変でした。
看護ケア提供システムを選ぶ
自分の部署の特性を理解したら、必要な看護を提供するための、看護ケア提供システム、を検討します。チームナーシング、プライマリーナーシング、機能別などの看護提供方式です。
外科病棟のときは、スタッフの経験年数が若い集団だったので、経験の豊富な看護師をリーダーとして、固定チームナーシングを組みました。日勤のリーダーは水曜日始まりで土日は休日、翌週の火曜日までの1週間リーダーでした。そうすると、退院調整も進みました。
慢性疾患が多い病棟では、プライマリーナーシングを導入して、入院のたびに同じ看護師が受け持ちをしました。それぞれに一長一短ありますが、スタッフと相談しながら、自分の部署に合うシステムを考えてきました。
人材のマネジメント
一般的なマネジメントの本には、マネジメントは物事を成し遂げることですが、自分一人ではなく、他者を通じて、実現することと書いてあります。マネジメントには、ヒトを動かすことが大きな課題です。
能力開発
自分たちの看護ケアの質を上げるためには、実践する人を育てることが重要です。本人のキャリアを育てることと、部署で活躍できる人材に育てることの両方を実現する必要があります。まず、自分の部署に必要な能力を把握しておきます。その能力をつけるための教育計画も必要です。また、スタッフが成長できるように、一人ひとりに関わります。その方法としては、目標管理がありますが、これは、別に詳しい記事を書きたいと思っています。
新人教育
毎年、新人看護師が入ってきます。国家資格は持っていますが、わたしの時代と違って、診療の補助の技術はすべて、OJT(On-the-Job Training)で身につけます。プリセプターを配置する場合もあると思います。新人看護師が職場になじむための支援とともに、プリセプターのモチベーションアップのための承認など、新人看護師とともに、その周囲への配慮も必要になってきています。
また、院内のラダー研修に参加する時間も確保します。新人看護師が研修に遅刻すると、看護師長が叱られます。
採用者や退職希望者への対応
新人看護師だけでなく、経験者が中途採用される場合もあります。経験がありスキルを持っている場合でも、診療科によっては、業務支援が必要です。新しく加わったメンバーとして部署に適応していくプロセス(組織社会化と言います)を支援する必要もあります。部署に合わずに中途採用者がすぐに辞めてしまうと、看護部長に看護師長が叱られます。
また、退職を希望するスタッフへの対応もあります。理由を聞いて、時には、引き留め、それでも、だめだなと判断したら、看護部長に相談します。わたしは、理由と本人の仕事の仕方を見て、引き留めても、お互いのためにならないと思ったら、退職の時期について相談します。年度途中での退職は、代わりの人材を確保できませんので、できたら、年度末にしてもらえないかと本人と相談します。退職時期を決めるのは難しいです。
労働環境の整備(勤務表の作成、労働時間と超過勤務、勤務体制、休暇)
勤務表の作成は、看護師長の管理観を表現する機会です。夜勤の組み方や休みの指定など、いろいろ考えることが多いです。看護師長のつぶやきブログ【めでろぐ】はとてもおもしろくて参考になります。
【保存版】勤務表の作り方
https://mede.kangonote.com/kinmuhyou/
労働時間は、労働基準法で週40時間・1日8時間が法定労働時間として規定されていますが、看護は、24時間の業務です。夜勤もありますし、土日も勤務があり、定休日はありません。
休憩時間は、労働時間が6時間をこえる場合は45分以上、8時間をこえる場合は1時間以上と規定されています。でも、休憩時間だからと閉店できるわけではありません。勤務が偏っていないか、休憩時間は確保できているか、ひとりひとりへの配慮が必要になります。
また、超過勤務も同様です。ワークライフバランスのためにも、超過勤務時間に関しては、人の配置を工夫したり、業務を改善したり、常に検討課題の上位にあがります。
職員の労働安全衛生
スタッフの健康管理も、看護師長は注意しておきます。
健康診断やストレスチェックなど、院内での取り決めを、ちゃんと受けているか、確認します。時には、針刺しなどの身体的リスクや、ストレスなどの精神的リスクに対応する場合もあると思います。スタッフの健康問題を感じたときは、早めに看護部長や副看護部長、産業医と相談することをお勧めします。
施設や設備のマネジメント
モノに関してのマネジメントもあります。
医療施設の設備環境
病棟や外来など自分の部署の施設整備を管理します。例えば、空調設備はどうなっているのか、温度調整は各部屋なのか、中央管理なのか。電気設備はどうか。特に、酸素供給については、元栓であるシャットオフバルブの位置や操作手順は確認しておきましょう。非常口の場所や防火扉、消火器や避難用具、誘導灯の確認も大切です。
患者の療養環境
ベッド周辺を見ても、ベッド柵やオーバーテーブル、床頭台、リネン類やアメニティ、など、安全性や快適性を確認します。また、転倒防止の医療安全の視点や感染対策の清潔管理の視点も大切です。
病棟内では、ふろ場やトイレの機能や整備はどうでしょうか。療養環境では、ナースコールも大切な設備です。車いすやストレッチャーもありますね。
スタッフの作業環境
病室内での医療処置や看護ケアを行うときには、支障なく行えますか。スタッフステーション内でも、記録をしたり、申し送りをしたりするスペースは情報管理が必要です。医師が患者家族に説明するときや看護師が患者指導をするためのプライバシーが確保できるスペースも必要です。
看護師が診療材料や薬剤を準備するときは、医療安全が確保でき、感染管理ができるスペースが必要になります。スタッフステーション内には、いろいろなスペースがあると思いますが、それぞれの目的を遂行できる場所になっていますか。
物品のマネジメント
必要なときに必要なものが、適切に使用できる状態を維持することは、ときには、看護師長の責任になります。
わたしが外科を管理していたとき、胸部外科医師は特別な胸腔ドレーンバッグを使用していました。院内で使うバッグよりも精度がよく高額でした。わたしが在庫管理をしていました。手術の予定を見ながら、在庫数を確認していました。ある日、食道がんの術後の患者に、消化器外科医師の指示でそのバッグを使用していたのですが、週末に廃液量が多く、一気に使用量が増えて、在庫がなくなってしまいました。このときは、焦りました。SPDに協力いただき、近隣の病院にある在庫をかき集めてもらいました。
物品管理
あまり、多くの在庫を抱えると日切れになる場合もあります。自部署の特有な物品は使用頻度と重要度、数量などを把握しておく必要があります。
物品供給システム(SPD)
現在は、院内物流管理システムが導入されている病院が多いと思います。定数管理をして、在庫が多くならないように管理します。在庫が多いと場所も取ります。
医薬品の取り扱いと管理
医薬品は取り扱いに関するマニュアルがあるはずです。それに基づいて運用します。持参薬や中止薬なども含めて適切に管理します。
重要なのは、「麻薬及び向精神薬取締法」に基づく薬品の管理です。麻薬は、堅固な保管庫で施錠管理し、向精神薬も施錠管理が必要です。これらの薬品管理は紛失防止のために台帳などの記録を残します。
バイヤルやボトルの薬剤は、開封月日を記載して、管理しています。
医療機器等の管理
医療器具や医療機器は常に使用可能な状態であるか確認します。
交代制勤務のスタッフは、自分の勤務のときに調子が悪いと思っても、引継ぎを忘れて放置されることがあります。機器の調子が悪いときは、早めに報告するように、指導していますが、ときどき、師長の机の上に置かれているだけで、何がどう悪いのかわからないときもあります。
廃棄物の取り扱いと管理
スタンダードプリコーションに沿った感染対策とともに、ごみなどの取り扱いも注意が必要です。血液体液が付着した感染性廃棄物の中でも、針刺し防止のための取り扱いをスタッフが守っているか。廃棄用具を正しく使用しているか、自分自身を守るためにも指導します。
情報のマネジメント
管理は、ヒト・モノ・カネと言われ、それに最近は情報も追加されます。
情報の種類
わたしたち、看護管理者が取り扱う情報は、いろいろありますが、重要なものは以下になります。
- 病院の経営情報:患者統計、医業経営分析(収益、費用、生産性)
- 職員情報:個人情報、勤続年数、超過勤務時間、離職率など
- 患者情報:電子カルテ、オーダーリングシステム、インシデントレポート、重症度、医療・看護必要度など
情報の管理
情報は、ものごとの判断や行動をおこすための意思決定に、用いられます。情報は、収集・検索・蓄積・発信などで活用することで、その機能や重要性が増します。
情報を取り扱うときは、セキュリティが大切です。情報漏洩防止や守秘義務は当たり前ですが、電子カルテを廊下に放置していたりしていませんか。
情報セキュリティ:インターネットやコンピュータを安心して使い続けられるように、大切な情報が外部に漏れたり、ウイルスに感染してデータが壊されたり、普段使っているサービスが急に使えなくなったりしないように、必要な対策をすること
一般的には、情報の機密性、完全性、可用性を確保することと定義されています。
- 機密性:ある情報へのアクセスを認められた人だけが、その情報にアクセスできる状態を確保すること
- 完全性:情報が破壊、改ざん又は消去されていない状態を確保すること。
- 可用性:情報へのアクセスを認められた人が、必要時に中断することなく、情報にアクセスできる状態を確保すること
情報開示への対応
インフォームドコンセントの理念に基づく医療の一環として、カルテ情報の提供や開示を進める動きがあります。患者との信頼関係や協力を求めるためにも有意義とされていますが、個人情報の悪用などの危険性もあります。開示にあたっては、院内で取り決めた適切な対応が必要です。また、看護記録は記載基準に即して記載することが重要です。
組織におけるリスクマネジメント
リスクマネジメントは看護師長として、重要な役割です。院内研修も定期的に開催されていると思います。詳しい内容は、別の記事を作成したいと思っています。
- 医療安全・感染管理のリスクマネジメント
- 事業継続計画(大災害や事故などの被害時の対応)
サービスの評価
最後は、自分たちが実践した看護サービスを評価します。
サービスの対象からの評価
院内で定期的に患者満足度調査を実施していませんか。活用しやすいのは、患者の声などご意見を頂く機会です。直接、看護師長が受ける苦情もあると思います。時には、お褒めの言葉もあります。良かったことは、スタッフで共有し、頑張ったことを承認します。悪かったことは、改善のチャンスです。
自己評価
年度初めの目標管理にそって、できたこと、できなかったことを評価していると思います。
それ以外には、インシデント・アクシデント件数と内容、手指消毒実施状況、褥瘡発生率、身体抑制実施率など、データを参考にしてみてはいかがでしょうか。その場合は、他と比較する方法もありますが、自分の部署内での経年的な変化を見たほうが、達成感が得られるのではないでしょうか。
第3評価
病院全体では、財団法人日本医療機能評価機構(病院機能評価)、国際標準化機構によるISO9001、JCI(患者安全と医療の質改善を目指す、米国の国際的な医療施設評価認証機関)などがあります。看護では日本看護協会のDiNQL(ディンクル)がありますが、わたしは参加したことはありません。
まとめ
以上、見てきましたが、看護師長のマネジメントの多さに圧倒されますか。
でも、日々、意識はしてないけれど、実践していることだったのでは。
看護師長は、
- 組織目的を達成するために、看護サービスの仕組をつくります。
- 人材のマネジメントとして、ひとりひとりの能力を開発して、必要な役割に配置します。
- ひとりひとりのワークライフバランスを考慮して、労働環境を整備します。
- 安全な医療を提供するために、施設や環境、物品をマネジメントします。
- 患者情報や院内のデータの情報セキュリティを行い、管理の意思決定に情報やデータを使います。
- 患者や職員を守るためにリスクマネジメントを行い、そして、自分たちの看護サービスを評価します。
言葉にすると、押しつぶされそうですが、実際に、毎日やっていることです。日々、管理に追われて、あっという間に時間がたち、焦ってしまう看護師長さんもいらっしゃると思います。今、自分がやっていることは、このマネジメントなんだと自分で整理できれば、これは看護師長の仕事・役割だと自信につながるのではないでしょうか。うまくやれるかどうかは別として、看護師長として、必要なことを行っています。
看護部長から見ると、
看護師長さん、ちょっとずつ、自分を認めて、自己信頼をもってほしいです。
最後に、お勧めの本を紹介します。
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